Tag Archive: 待機合格者問題

税理士市場への進出

合格待機者対策としてもっとも推進されていることが会計士の税理士市場への進出です。
公認会計士は、登録すれば税理士資格も取得できることになっているので、これを積極的に推進して、飽和状態にある公認会計士人口を整理しようというのが狙いです。
ただしこの動きに対して日本税理士会連合会が強く反発しています。進出

公認会計士は税理士になれるのか?

公認会計士は税理士となる資格を有し、税理士登録する(税理士会に入会する)ことにより税理士と称して税務(税理士の独占業務)を行うことができます。つまり、公認会計士は税理士試験を受験したり、税務署に一定期間勤務したりすることなく税理士になれるということです。

待機合格者問題の直接の解決にはならない税理士市場への進出

公認会計士を税理士に転職させることで、インフレ状況にある公認会計士市場の整理をすることができます。
しかしこの方法も待機合格者問題の直接の解決にはなりません。
それは、待機合格者は税理士登録ができないことと、そもそも税理士会がこのような公認会計士サイドの動きに強く反発しているからです。

合格待機者は税理士に登録できず

「公認会計士」とは、公認会計士協会の名簿登録者または公認会計士の有資格者であり、公認会計士試験を合格しただけの者は税理士名簿に登録できません。実際、公認 会計士の資格を得るには、試験合格者で、実務経験(業務補助等)の期間が2年以上あり、かつ、実務補習の修了が要件とされていますが、待機合格者は公認会計士試験を合格したものの、監査法人等に就職し業務補助等に従事することができないという恋人会計士としての資格の要件を満たしていないので、税理士としても登録できないのです。
もっとも、現役の公認会計士が税理士に転職すすれば、インフレ状態が解消されるわけですから、間接的に解決につながる可能性はあります。

税理士会の反発

当たり前の話ですが、このような公認会計士業界の動きに対し日本税理士会連合会(税理士会)は強く反発しています。
その為、公認会計士の税理士市場への進出は遅々と進んで以内というのが現状です。

企業財務会計士制度について

企業財務会計士制度は2010年に金融庁が開催した「公認会計士制度における懇談会」で提案された待機合格者問題への対策案で、公認会計士試験に合格した者には企業財務会計士という資格を付与するという制度でした。
しかし公認会計士業界や受け入れ側の企業から反対の声が多く、2011年にはこの制度の導入は見送られました。企業

企業財務会計士制度の趣旨

企業財務会計士制度は公認会計士試験に合格した者には企業財務会計士という資格を付与するという制度で、公認会計士試験に合格はしたが業務補助の要件を満たせない合格待機者へに救済案として考え出されました。
これは会計士試験合格者に「企業財務会計士」という新しい資格を与えることにより、「会計のプロ」として民間企業への就職など監査法人以外への道を開くことも狙う趣旨があったようです。

企業財務会計士制度への反対

「企業財務会計士」というこの新しい資格の創出については、公認会計士業界や受け入れをするはずの企業から多くの反対意見が出されました。
結局、こうした反対意見の声が多数上がったことで、企業財務会計士制度の採用は見送られました。

公認会計士業界の反対意見

公認会計士業界の反対意見は次のようなものです。

  • 新たな制度の創設は、制度の仕組みを複雑にする
  • 企業側が新たな資格を必要であるかどうかは企業側の問題であって、資格を付与するだけでは合格者の未就職問題は解決しない

企業サイドの反対意見

企業サイドの反対意見は次のようなものです。

  • 国家資格を作って無理やり受け入れを迫られても困る

金融庁の待機合格者対策について

金融庁は、待機合格者対策の改善のために11年度の公認会計士試験から合格者の大幅な絞り込みに着手し、合格者は以前の年間1300~1500人規模に戻しました。
また2010年には、「公認会計士制度における懇談会」を開催し、業務補助などの制度変更に乗り出しています。

合格者数の削減

「会計士5万人構想」の下、公認会計士試験の合格者を府増やしていた金融庁ですが、就職先がなく資格を取得できない未就職者が大量発生したため、金融11年度の公認会計士試験から合格者数を減らしています(減らしたというよりも、元に戻しただけですが)
これにより、試験合格後も実務経験を積めず資格を取得できない未就職者の増加に一定の歯止めがかかる一方で、既に生み出してしまった待機合格者については依然として問題が残り続けています。

公認会計士制度における懇談会

金融庁は、合格者の経済界等への就職は進んでおらず、社会人の受験者・合格者についても十分増加していないことや、公認会計士になるために必要な実務経験を満たすことができないことを懸念し、「公認会計士制度における懇談会」を開催し、2010年8月4日に中間報告書で「企業財務会計士制度」などの新たな制度を提案しています。

業務補助の制度変更

公認会計士になるには2年以上の業務補助が必要ですが、一般企業に収束した場合、企業等では実務従事要件を満たしにくいということがありました。
つまり、資格のコンセプトを変えたにもかかわらず、実務教育の環境をそれに合わせなかったために、結果として、公認会計士試験に合格しながら、就職できず、資格取得に至れない人材が増える結果になっています。

実務従事要件を満たせない理由

一般企業で業務補助の実務従事要件を満たす場合、資本金額5億円以上の会社であること(資本金額が5億円以上の法人等に勤務(在籍)する必要はありませんが、従事する業務は、資本金額5億円以上の法人等を対象とするものである必要がある)が要件になります。
実際、このような要件を満たせる会社に就職できることは少なく、結果として、この「資本金5億円以上」の要件が、企業への就職を妨げている一番大きな要因となっています。

制度改正の検討

金融庁が開催した「公認会計士制度における懇談会」ではこの業務補助の制度改正も検討されました。
具体的には、実務従事要件を満たす企業を「資本金1億円以上の法人、または、金
融商品取引法の対象法人(金融商品取引法の対象となるために監査報告書の発行等の具体的な作業を行っている法人を含む)において」 とすることが適切であるとされました。
ただしこの変更案はまだ実現していません。